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東京地教研2月オンライン例会

福島で学んだこと ~ふくしま学宿の取り組みと福島の現状~

 

まもなく東北地方太平洋沖地震の発生から10年が経過しようとしています。津波による被害は非常に大きく、広範囲に及びました。さらに東京電力福島第一原子力発電所の事故により、未だに避難生活を余儀なくされている方々もおられ、福島の復興はまだまだ見通せない現状があります。そのような状況下、福島県では観光交流課と福島県観光物産協会が中心となり、「ふくしま学宿」の取り組みが行われています。これは、福島県が震災で途絶えてしまった修学旅行を新しい形(震災学習)で復興しようとする試みです。

今回は、報告者が実際に高校生を連れて現地で行った活動や、福島の現状を報告したいと思います。今回の例会は、今夏開催を予定している福島大会の学習会の一環でもあります。

 

・日時:2021年2月13日(土) 15時30分~17時00分

・場所:Zoomによるオンライン

・報 告 者:飯塚 和幸(明治大学付属中野中学校・高等学校)・吉村憲二(神奈川県立緑ケ丘高校)・大野  新(大東文化大学)

 

●当日の報告

 2021年2月13日(土)15時30分~17時00分、Zoomによるオンラインで3名の理事から報告と質疑応答がありました。コロナ禍での地教研イベントの第二回目です。

 1人目の報告者は大野 新さん、前勤務校の筑波大学附属駒場高校の1・2年生とともに参加した、モニターツアーの福島県教育旅行(2016年12月に2泊3日)の内容です。浜通りを訪問し、現地の住民や東電社員からも話を聞き、最後には、コラッセ福島(今夏の地教研大会会場)で地元の福島高校生との交流するという濃密な時間を過ごしたという報告がありました。また、大野さんが実践してきた水俣研修の参加者が、ふくしま学宿にも参加するとことで意義が高まったというお話もありました。そもそもこのツアーは、元灘中高校の教員の方(現福島大教員)がコーディネーターを務め、灘中高と筑駒との2校の参加で始まったものです。

 次に、明大附属中野中高の飯塚和幸さんから報告がありました。2011年3月11日は、修学旅行先の水俣の宿舎で東日本大震災をテレビで見ていたとのことです。生徒からは「水俣で起きたことと同じことが、福島でも起きているのですか」との問いかけがありました。

 飯塚さんはこれまで何回も被災地を訪れて、復旧、復興のあり方に、強い関心を持たれています。勤務校では、2018年と2019年にふくしま学宿を実施しています。事前学習にも力を入れ、理系生徒の興味関心に従い、原発のしくみやメルトダウン、なぜ福島に原発が立地したのかなどもテーマにしています。飯塚さんは、復興とはなにか、ハード面では「復興」、「復旧」、「開発」と進むが、本当の復興、「元の生活は戻らない」、「元のものをとりもどすのか、新しいものをつくりだすのか」、参加した生徒は“疑問”を持つようになるとのことです。

 3人目は2019年にふくしま学宿を実施された神奈川県立緑が丘高校の吉村憲二さんからの報告です。2019年8月、「ふくしま学宿」(モニターツアー)37名参加。現地の福島県立ふたば未来高校生徒との交流ができたことが特徴でした。1年間かけて「探究フォーラム」(横浜国大で開催)に成果を発表する予定であったが、コロナ禍で中止となりました。今年度はオンラインプログラムとして、東電関係者、オンラインフィールドワーク、ふたば未来学園との交流等を実施して、この取り組みが朝日新聞神奈川版にも取り上げられたとのことです。

 参加者からは、ICT関係の双方向ツールに関する質問や、事前学習についての質問がでました。また、福島県庁職員の方から、「ふくしま学宿」の担当者としてお話を聞くこともできました。復興事業に携わる立場からの、非常に含蓄のあるお話を聞くことができました。オンライン例会は空間距離を超越することが実感できました。